序.「歴史講座」開設のねらい

フェイクニュース

 アメリカ大統領選挙を発信源にフェイクニュースという言葉が流行っています。日本語で言うと、流言蜚語といいます。根拠のない嘘の拡散を指す言葉です。一方で、ファクトチェックと言う言葉があります。事実検証ないしは照合という機能です。こちらは、実証という手続きが面倒で時間がかかるため敬遠され勝ちです。この結果、フェイクニュースが横行し、虚偽と真実の境目が解りにくくなって混乱が生じます。
 この混乱を正すのが、ファクトチェックです。現在の風潮は、こちらが劣化し危機に貧しているのではないかと危惧しています。歴史に粉飾は付きものです。しかし、虚偽に惑わされず、歴史の真実を見る確かな眼をどのように獲得するかを考えると、一次史料に学ぶという学習を丁寧に心掛けることが肝要ではないかと思います。一次史料に学ぶということは、古文書を学ぶということではありません。信頼性の高い文献や資料に学ぶという姿勢です。解読史料であっても出来るだけ原典に当たることも大切です。
 本講座では、ファクトチェック機能を重視して学習を進めたいと考えています。基本的には、『姫路市史』の成果を踏まえ、その普及および補充を念頭に置いて運営する方針です。

姫路藩の幕末維新史

 姫路藩の幕末維新史を例に取って考えてみましょう。まず第1 に私が感じるのは幕末維新史の研究の蓄積が乏しいという現実です。このため姫路藩の幕末維新史が語られる時、誤解された内容が多く、流言蜚語の類いが飛び交っています。これを正していくのは、容易なことではありませんが、一つの方法として平易に学べる一次史料を提供して学習の機会を増やすことであると思います。そして、何れは近代史にまで視野を広げたいと考えています。

慶運日録

 次に幕末維新史は、用語になじみ薄く難解なため人気が無いと言うことも上げられます。しかし、現代に直接つながる歴史であることは間違いありません。「歴史講座」では、難解な古文書解読の学習を行うつもりはありません。解読された史料でいいからまず原典に当たり、史実の確認と粉飾された流言蜚語の峻別、すなわちファクトチェックをしっかり行うつもりです。

「顛衣余録」の紹介

 幸いにも幕末の姫路藩士、亀山雲平の残した一次史料「顛衣余録」と「慶雲日録」等が所蔵者の妹島治作氏から託されて私の手元にあります。「顛衣余録」は、幕末に姫路藩で大目付を勤めた亀山雲平の残した23 巻からなる日記です。
 「慶雲日録」は、姫路城開城の時、亀山雲平が備前藩との交渉に当たった生の記録です。これ等の史料は、『姫路市史』が刊行されてから発見されたため『姫路市史』には採録出来ませんでした。

顛衣余録

 私の手元に眠らせるのは残念ですので、これを使って幕末の姫路藩政の実態を紹介し、歴史を学ぶ機会を提供したいと考えています。解読文や読下し文を使用し、時には古文書の原典に当たり事実の確認を行います。史実に基づいた姫路藩の幕末・維新史の解明に挑戦していきたいと考えています。
第1回目の講義は、近世後期姫路藩主となった酒井家の入封から始めたいと思います。

 

「序.「歴史講座」開設のねらい」への1件の返信

祝開講!
史料画像は近日掲載します。
前ページで記事が途切れていてわかりにくくなっています。おいおい修正します。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です