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播州弁あれこれ6

播州弁弾圧史

 一年ほど前、姫路城世界遺産登録30周年イベントで、県立大の宇那木先生による「姫路藩と忍びの者」と題する講演を拝聴した。今も残っている忍町には、江戸時代、忍びの者が住んでいて、飾磨門に出入りする荷物や人流を監視していたとのこと。忍びが住んでるよと町名にまでなっているのも、妙に笑えるのだが、それは忍ぶ対象が外向きだったことによるものかも知れない。

 それはさておき、配布資料に播州弁に関する通達があった。またもや未配本の『姫陽秘鑑』からの引用である。「播州弁あれこれ4」で取り上げた通達と同じ天保11年(1840)の通達である。酒井家の念の入れようが窺える。先のコラムのように、事情はあったにせよ、よほど播州弁の蔓延を気に病んでいたのだろう。

鄙言
コマイ コマカト云ヘシ
ソウジャサカイ ソレユエト云ヘシ
ナンボ 何ホドトカイクラトカ云ヘシ
キヨル クルト云ヘシ
ヌクイ アタタカイト云ヘシ
メゲル コワレルト云ヘシ
ジョウニ 多クトカ沢山トカ云ヘシ
コウ云フコッチャ コウ云フ事デゴザルトカ
コウ云フコトダトカ云ヘシ
シヨル 何ヲシテ居ルト云ヘシ
シンドイ クタビレタト云ヘシ
イカニャナラヌ ユカネバナラヌト云ヘシ
チョコチョコ ヲリヲリトカセツセツトカ云ヘシ

右之類何程モ可有之
都而柔弱ナル語意ナマケタル言葉ハ武士ノ相タシナミ可申事ニ候事

 播州弁は「ナマケタル言葉」だそうな。やっぱり酒井家は播州弁を見下げている。この通達を見た私たちが、逆に播州弁辞典のように思えてプッと笑ってしまうのは、弾圧にも屈せず、播州弁が現代にまで正しく継承されている証しである。
 土蔵の地下室に、夜な夜な秘かに集まって、
揺れるろうそくの灯りの下、
「なんどいやー」「べっちょない―」
と藩士たちが唱和している姿があったかも
と勝手な想像を膨らませてほくそ笑むのである。

 そう言えば播州弁のスターたちが通達にいない。

ベッチョナイ モンダイナイト云ヘシ
ゴウワク ハラガタツト云ヘシ
ラッキャ OKデゴザルト云ヘシ?

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