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古城の実在モデルを求めて3

4.ネビガーの出身地にある古城塞ではないか

 ネビガーの出身地は西プロイセンのローゼンベルグとある。西プロイセンは現在のポーランド北東部である。
 ローゼンベルグという町はドイツをはじめ東欧各地にいくつか見られるが、この地域には見当たらない。ウィキペディアによるとスシュという人口3 万人ほどの小さな町が、昔ローゼンベルグと言われていたという。

 「ベルグ」とは街とか城塞の意味なのでグーグルマップのストリートビューで探したとところ、市街地中心部に14世紀の城壁の一部が残っている。この城壁は下部の不整地を石の乱積みで平らにして、その上にレンガ積みした構造である。これは一般的な手法で、この構造は城塞模型にも見られる。ネビガーもこの城壁を目にしているだろうから、制作に影響していると言えなくもない。しかし、スシュ周辺に男性的な岩肌をもつ山は見当たらない。神戸又新日報の記者が聞いた通り、やはりライン河畔にあるのかも知れない。この推論は棄却せざるを得ない。

5.ライン河畔に類似する古城塞はあるのか

 ライン川は全⾧1,233 ㎞の国際河川で、アルプスの氷河を源流に、スイス、リヒテンシュタイン、オーストリア、ドイツ、フランスを経てオランダで北海に流入している。中下流域は運河で他水系の河川と結ばれており、古くから欧州における重要な物流手段である。このため時々の権力者たちが争奪を重ねてきた地域でもあり、河畔には多くの城や砦がある。
 例によってグーグルマップとストリートビューを用いて、ロッテルダムからアルプスまで沿川の城址や砦跡を確認していく。結果として城塞模型に見られるような特徴的な互層の地層を持つ岩塊に立つ城を見つけることはできなかった。
参考までに比較的近いイメージの古城塞を紹介する。

・Burg Katz(ブルグカッツ 通称ネコ城)
 ボンからコブレンツを経てマインツに至る区間はライン峡谷と呼ばれ、両岸に険しい段丘崖が続く。かつての舟の難所ローレライ岩もこの区間にある。古くから物流の利権をめぐってフランスとの紛争が繰り返され、河畔には多くの古城塞がある。
 ブルグカッツはコブレンツの南20 ㎞のライン河畔にある。城塞模型の様な独立丘ではないが、角度によっては円錐形の岩山の頂上にあるように見える。岩山と城塞の比率も似ている。建物のイメージが違うが、これは1998 年に再建されたもので、ネビガーが見ていたとしたら、その当時は再建着手間もないころで、円筒形の主塔しか残っていなかったはずである。
しかし、ネビガーがこだわった互層の地層を持つ紡錘岩群はこの地には見られない。

6.地形から地域を絞り込むことはできないか

 城塞模型の実在モデルは、古城や砦跡と決まっているわけではない。教会や修道院である可能性も否定できない。その意味ではモンサンミッシェルも候補の一つと言える。

モンサンミッシェル

ドイツ兵が船でチンタオまで派遣される行程で目にしたかもしれない。
しかしこの地にも特徴的な岩塊は見当たらない。
そこで岩塊に焦点を当てて地域を絞っていくことを試みた。
ヨーロッパ大陸における奇岩、地層の修景地をキーワードに探す。

・ザクセンスイス国立公園
 ドイツ東部ドレスデンの南東30 ㎞のチェコ国境付近に位置する国立公園で、エルベ川の浸食によって奇岩群が形成され
ている。写真は1851 年に架けられたバスタイ橋。城塞模型の下部にあるアーチ橋とよく似ている。砂岩の互層構造が見せ
る独特の岩塊群もイメージ通りである。
それにライン川に比べてネビガーの出身地に近い。

 バスタイ橋の東に隣接しているのがノイラーテン城である。 13 世紀の城であるが火災で建物は残っておらず遺構のみである。現地の案内板には再現イラストが描かれていて城塞模型とよく似たイメージである。また再現模型も展示されており、岩塊の地層の表現など、こちらも城塞模型によく似ている。ただしネビガーの生きた時代にもすでに城塞構造物はなく、この城跡が実在模型であるとの断定には至らない。
 エルベ河畔には、さらによく似た古城塞や修道院が存在するかもしれないが、限られた時間の中での机上調査でもあり、そこまでは至っていない。しかしながら、故国の記憶をもとに、模型製作を進めたネビガーのイメージに、少しは歩み寄れたのではないだろうか。

「古城の実在モデルを求めて3」への1件の返信

2024,2,4日、改めて「実在モデル3」を読み直しました。わたくしの感想では、ザクセンスイス国立公園のイメージが一番近いと感じました。「実在モデル1・2・3」を順番に読んでいくと、作成者ヴァルターが生きた時代や生活背景に近づきつつある感がして面白いです。ヴァルターは、国民兵となっていて、年齢は30~40歳前後と推定しています。興味ある推論です。続きを楽しみにしています。

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